PPI/DPIの誤解を解く:レイアウト倍率と安全な画像配置
PPI は画像に付く仮定値、DPI は装置の点密度。画質を決めるのは 画素数 × 配置倍率 です。 本稿は “PPIを300にすれば高画質” という誤解を解き、倍率と実効ppiで配置の安全域を判断する手順をまとめます。
先に結論(TL;DR)
- 100%配置で 150–300ppi を目安(用途/距離で調整)。
- 50%縮小配置 → 実効ppiは2倍、200%拡大 → 1/2。
- トリミング判断は PPI 値より残画素数で。
1.5 よくある誤解と事実
- 誤解: PPI=300に設定すれば高画質になる → 事実: 画素数が不変なら変化なし。
- 誤解: 200%拡大でも300ppiならOK → 事実: 200%は実効ppiが半減します。
- 誤解: 印刷DPI=画像PPIに合わせるべき → 事実: ハーフトーンやレンダラが仲介します。
関連
印刷側の前処理/順序は ハーフトーンとシャープ順序 を参照。
1. PPI と DPI の役割
- PPI: 画像ファイルのピクセル密度の仮定。画素数は増えない。
- DPI: 出力装置(プリンタ等)のドット密度。
- 実効解像度 = 画像の画素数 ÷ 仕上がり寸法(倍率の関数)。
2.5 倍率と実効ppiの関係式(早見)
// layoutScale: 100%=>1, 50%=>0.5, 200%=>2
export function effPpiAtScale(px:number, mm:number, layoutScale:number){
const base = px / (mm/25.4); // 100%時
return Math.round(base / layoutScale);
}
console.log(effPpiAtScale(3000, 200, 2)); // 200%配置 -> 190ppi
配置倍率は必ず数値化し、拡大時の劣化を早期に把握します。
2.6 単位変換ヘルパ(px/mm/inch)
export const mmToPx = (mm:number, ppi:number) => Math.round((mm/25.4)*ppi);
export const pxToMm = (px:number, ppi:number) => +(px/ppi*25.4).toFixed(1);
export const inchToMm = (inch:number) => +(inch*25.4).toFixed(1);
export const mmToInch = (mm:number) => +(mm/25.4).toFixed(2);
2. 実効ppiの計算(倍率で変わる)
// 実効ppi = (ピクセル寸法 / 仕上がり寸法[inch])
export function effPpi(px:number, mm:number){ return Math.round(px / (mm/25.4)); }
// 例: 幅 3000px を 200mm で配置 -> 381ppi
console.log(effPpi(3000, 200));
拡大配置の常用は避け、必要なら元画像の画素数を増やす/代替素材を検討します。
3.5 トリミングと余裕(ヘッドルーム)
- 本番トリミングを想定し左右上下 3–5mmの余裕画素を確保。
- 傾き補正/アミ抜きで外周劣化 → 仕上がりから外側に余白を持つ素材が安全。
- 余裕が無い時は縮小配置で実効ppiを稼ぐ。
3. 安全な配置ルール(短冊)
- 写真/誌面: 100%配置で 150–300ppi(長距離用途は 100–150ppi)。
- UI/細文字: 200ppi 以上を目安。厳密用途は 300ppi。
- 拡大配置の常用は避ける(1.25x までを限度の目安)。
4.5 アプリ運用Tips(InDesign/Illustrator)
- リンクパネルの実効解像度を列に追加(監視を習慣化)。
- 拡大が避けられない場合は画面表示を100%で粗探し → 元画像の再準備を検討。
- 書き出し時はカラー変換と圧縮の順序に注意(sRGB/CMYK設計)。
5. ケーススタディ:A5→A4、余白トリミングあり
- 元画像 4000×2667px を 210×148mm(A5横)に原寸配置 → 実効約483ppi。
- A4横(297×210mm)に拡大配置(141%) → 実効約342ppi。余白5mmトリミング後でも実用域。
- さらに見開きへ拡大(200%相当) → 実効約241ppi。誌面なら許容、UI/細字には再考。
判断基準
拡大で下がる実効ppiを数字で把握し、用途別の閾値(誌面/ポスター/細字)に照らして判定します。
4. ワークフロー(判断手順)
- 仕上がりサイズと観察距離を確認 → 目標実効ppiを設定。
- 配置倍率を決める(25/50/100%)。拡大は極力避ける。
- 不足は再サンプリング or 代替素材、過剰は縮小+弱シャープ。
6. 公開/入稿前チェック
- 倍率含めた実効ppiが基準内
- 細文字/UIにじみ無し(等倍確認)
- リング/段差が出たら縮小比/前処理見直し
7. NG集(やりがちな失敗)
- PPIだけ300に変更して入稿 → 見た目は変わらず、拡大配置で劣化は継続。
- 十分な画素があるのに過剰dpiで入稿 → 容量/処理時間だけ悪化。
- 細字/罫線を拡大配置で使う → にじみ/段差のリスク増。
FAQ
FAQ(可視表示)
1Web用は72ppiにすべき?
Webの表示はCSSピクセルと実画素数で決まり、PPIメタ値は無関係です。72/300いずれでも画素数が同じなら見た目は同じです。
2スキャンは600ppiが常に正解?
原稿の情報量と用途しだい。小型原稿の厳密再現なら有効ですが、粗い紙目/粒状も強調されます。最終実効ppiから逆算してください。
3PPIだけ変えて入稿してよい?
画素数が足りないままPPIだけ変更しても改善しません。必要画素数を満たす縮小/再サンプルが必要です。
まとめ:PPIではなく“画素数×倍率”で判断する
画質はPPI値ではなく画素数と配置倍率で決まります。実効ppiを計算し、拡大は避け、 余裕があれば縮小+弱シャープで安定させましょう。印刷工程の最適化は関連ガイド、 UIスクリーンのにじみ対策は整数スケール撮影を参照してください。