CMYKソフトプルーフと総インク量(TAC):入稿前の色と滲みの最終確認
CMYK変換とTAC管理は、色の安定と乾燥/滲みトラブル回避の要です。印刷所指定ICCと レンダリング意図を正しく選び、TAC超過を抑えた黒生成を行えば、初回から安定品質に近づきます。
先に結論(最短フロー)
- ICCは印刷所指定を採用し、ソフトプルーフで差を確認。
- TACは用紙/方式に準拠(上質260–280%、コート300–320%目安)。
- 本文黒はK100。リッチブラックはベタ背景など限定的に。
要点(TL;DR)
- ICC/レンダリング意図で見た目が変わる。ソフトプルーフで確認。
理由: 変換テーブルと紙白の仮定が異なるため、彩度・ハイライトの出方が変化。 - TAC超過は乾燥不良・裏移りの原因。プロファイル/黒生成で抑制。
失敗時: 現場でパウダー増/乾燥延長→納期リスク・色転び。 - バーコード・細線はK基調。レジストズレの影響を低減。
根拠: 4C合成のエッジズレを避け、読み取り安定性を確保。
1. 背景:なぜソフトプルーフが必要か
Webやディスプレイ前提のsRGBデータは、紙特性やインキ制約を無視しています。ICC変換で紙白・網点再現・ TAC上限を前提化しないと、彩度低下やシャドー潰れが突発します。レンダリング意図の選択と併せ、 校正段階で差を知覚しておくことが再現性を高めます。
また、K生成の方針(GCR/UCR)は、乾燥とにじみ、網点の安定に直結します。塗り面積が広いポスターや 細線の多い図版など、用途別にK寄せ/CMY配分を調整するのが実務のコツです。
2. ICCとレンダリング意図
用途に合うICCを選び、相対的な色差の少ないレンダリング意図を採用します。
# 代表的なICC例(日本)
JapanColor2011 Coated
JapanColor2011 Uncoated
JapanColor2001 Coated
# レンダリング意図の目安
相対的色域: 写真/グラデで彩度維持しつつハイライト保護(一般的)
知覚的: 広色域→狭色域の丸めで全体の見た目を優先(風景など)
彩度優先: ロゴや図版の色面を強調(印象最優先だがズレに注意)
絶対的色域: 校正紙で紙白込みの厳密比較(用途限定)
3. TACの管理
# 総インク量の目安
上質紙: 260–280%
コート紙: 300–320%
UV/高速乾燥: 条件により上振れ可(要相談)
TACはプリフライトで可視化し、超過領域を修正します。背景が暗いベタ面ではGCRを強めてK寄せし、 肌などの微妙な彩度領域はCMYを維持してくすみを避けます。
# プリフライトの代表的な検査
- 画像の解像度: 目的サイズで 250–350 dpi
- カラーモード: CMYK(想定ICC)/ 埋め込みICCの有無
- 総インク量: 上限超過箇所の有無(しきい値: 260/300/320% 等)
- 黒オブジェクト: テキスト/バーコードは K100、リッチブラックの混在検知
- オーバープリント: 意図しないON/OFF
- 特色: 4C化要否
- トンボ/塗り足し: 3mm 以上
- 小さすぎる文字: 6pt 未満の反転や細線
4. 黒生成(GCR/UCR)
# 黒生成(GCR/UCR)の考え方
・濃いグレー/黒はCMYを抑えKで担保(乾燥・滲み対策)
・彩度の高い色はCMYを優先(くすみ回避)
グレー系や大面積のシャドーはK比率を高め、乾燥時間とにじみを抑制します。一方で彩度を重視する箇所は CMYの構成を残し、色相シフトを避けます。K100の本文黒は見当ズレの影響が小さく、可読性に有利です。
5. ケーススタディ
5.1 コート紙の写真パンフ
- ICC: JapanColor2011 Coated、相対的色域。
- レンダリング意図: 知覚的も試し、青空や肌の彩度保持を比較。
- TAC: 300–320%、暗部はGCRでK寄せ。
5.2 上質紙の取説(細線・バーコード多)
- ICC: JapanColor2011 Uncoated、相対的色域。
- 本文黒: K100固定、細線・バーコードもK基調。
- TAC: 260–280%、ベタ面はK比率を高め乾燥リスクを下げる。
6. 入稿前チェック
- ICCとレンダリング意図が指定通りか。
- TAC上限を超過していないか。
- 本文黒はK100、リッチブラックの使用は限定的か。
- オーバープリント/特色/塗り足し/小サイズ文字の注意が反映されているか。
7. まとめ
ICC×レンダリング意図×TAC×黒生成の4点をテンプレ化すれば、入稿事故は大幅に減らせます。関連して解像度設定 も見直しておくと堅いです。
NG集(よくある誤解)
- 黒は全部リッチブラックが高級感: 細線/本文はK100が安全。
- プロファイルはどれでも同じ: TACや紙白仮定が違い結果が変わる。
- proofなしで本紙と同じ: 観察環境と紙特性の影響が大きい。
FAQ
FAQ(よくある質問)
1画像形式の基本方針は?(写真/スクショ/透過)
写真は AVIF / WebP(画質80–85%目安)、UIやスクショはPNG / WebP Lossless、単色ロゴはSVGが基本です。 実装の詳細は srcset/sizes設計ガイド と スクショ最適化 を参照してください。
2圧縮しても画質を落とさないコツは?
実表示幅に合わせたリサイズ → 過大ダウンロードを防ぎ、
srcset/sizes
を 実描画幅に一致させます。画質は写真で 80–85% を起点に、ノイズやエッジを目視確認。 仕上げは /compare で Before/After を見比べるのがおすすめです。3CLSを悪化させない画像の置き方は?
公開日: 2025-09-08編集: gazou-compressor.jp