gazou-compressor.jp

字幕/キャプション実務

字幕はアクセシビリティの基盤であり、同時に“検索可能なテキスト資産”です。音声の情報密度を損なわず、固有名詞や専門用語を誤解なく伝えるには、生成AI/ASRだけに頼らない堅牢なオペレーションが必要です。本稿は WebVTT を軸に、作成→整形→レビュー→翻訳→配信→計測→更新までを一気通貫で設計します。

先に結論
VTTは kind="subtitles"srclang を明示し、label で言語名をユーザーにわかる形で表示。動画アクセシビリティの要件(フォーカス/操作/コントラスト)に沿って <track> を提供。自動生成は“初稿”に限定し、人手レビュー+二重チェックで品質を固定化。

要点(TL;DR)

背景:字幕はアクセシビリティと集客の両輪

聴覚支援の観点では、効果音/話者/環境音の明示がユーザビリティを大きく左右します。法令/ガイドライン(WCAG 2.x、各プラットフォームの要件)も字幕の提供を強く推奨しています。

集客面では、字幕は検索クローラが解釈可能なテキストとして機能します。引用抜粋・タイムスタンプ付きリンク・章アンカーの整備により、動画単体よりも深い流入を作れます。

運用面では、イベント/プロダクト動画の再編集よりも字幕の差し替えの方が速く安価です。VTTを“差し替え可能な最後のレイヤー”として持っておくと、ローカライズや法務文言の更新に強くなります。

設計:ASR→整形→レビュー→翻訳→配信→計測

  1. ASR初稿 — モデルに固有名詞辞書を渡し、音質の悪い区間を先に洗い出す。
  2. 整形 — WebVTTに統一。行長は35〜42文字相当を目安、1〜2行。改行は句読点/意味単位で。
  3. レビュー — 話者/効果音/専門用語/句読点/誤変換を修正。1st/2nd の二重チェック。
  4. 翻訳 — 用語集とスタイルガイドに沿い、英語→他言語のピボットは極力避ける。
  5. 配信<track> で言語別に提供。defaultは主要言語のみ。
  6. 計測 — 字幕利用率/切替回数/完走率/離脱率を 動画メトリクス に追加。
HowTo JSON-LD
このページは字幕運用の手順を HowTo として構造化しています。検索結果での理解促進と、社内ナレッジの再利用性が向上します。

実装:HTMLのtrackとWebVTTの作法

ブラウザ標準の <track> を使えば、プレーヤー依存を避けつつ高い互換を得られます。VTTはUTF-8、BOMなし、LF改行で保存します。

<!-- HTML -->
<video controls poster="/poster.jpg">
  <source src="/video/intro.m3u8" type="application/x-mpegURL" />
  <track kind="subtitles" src="/subs/ja.vtt" srclang="ja" label="日本語" default>
  <track kind="subtitles" src="/subs/en.vtt" srclang="en" label="English">
  <track kind="captions"  src="/subs/ja_cc.vtt" srclang="ja" label="日本語(聴覚支援)">
</video>

WEBVTT

00:00:00.000 --> 00:00:02.500
こんにちは、Gazou Compressor へようこそ。

00:00:02.500 --> 00:00:05.000
本日は <v speaker>A</v> がお届けします。

00:00:05.000 --> 00:00:08.000 position:50%,line:85% align:center
[効果音] ドアの開く音

多言語:優先順位とUIの原則

同時多言語は管理コストが跳ね上がります。視聴ボリュームと市場性から主要2〜3言語を選び、需要を確認しながら段階的に拡張します。UIは“選択が一目でわかる”ことを最優先に。

配信とSEO:“見えないテキスト”を活かす

<track> でVTTを提供し、default は日本語/主要言語に限定。タイトル/説明/要点は ポスター戦略 と合わせ、OGP安全域上で文字が欠けないように。

ハイライト抜粋の可視化、章ごとのアンカーリンク、字幕の要点を本文にも短く転記することで、クローラと読者の双方に価値を届けます。

品質管理:レビュー/差分/バージョニング

互換性とフォールバック

NG/落とし穴

公開前チェックリスト

まとめ

字幕は“見えないSEO”であり、UXの安全装置です。VTTで多言語・検索性・アクセシビリティを同時に満たし、再生メトリクスで完走率と切替行動を継続的に観測しましょう。投資は主要言語から小さく始め、成果に応じて拡張するのが失敗しないやり方です。

FAQ

FAQ(よくある質問)

1タイムコードの粒度と整形

0.5〜1.0秒間隔が目安。重なりや過大な空白を避け、行長と改行位置を最適化します。可読性とリズムを優先。

2話者表記・専門用語の統一

用語集/スタイルガイドを作成し、翻訳時にも共有。ラベルを省略せず最小限のメタ情報を付与します。

3配信とSEOの連携

track要素でVTTを提供しつつ、OGP安全域ポスター戦略でメッセージを統一します。

4VTTとSRTはどちらを使う?

WebはVTT推奨。位置/スタイル/ルビ等の拡張に対応し、<track>と親和性が高いです。放送/編集系との連携が必要な場合のみSRTを併用。

5自動翻訳の注意点

文脈で揺れる技術語/固有名詞は誤りが残りやすいので、用語集を元にポストエディット。英語→他言語のピボット翻訳は誤差が累積しやすい点にも注意。

gazou-compressor.jp 編集部

画像圧縮・変換・背景除去などの実践テクニックと、Webで“速く・軽く・崩さない”ためのノウハウを発信しています。

関連記事

トピック/更新日の近いコンテンツ